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エスプレッソとは?ドリップとの違いと自宅で淹れる3つの方法

エスプレッソとは?|アイキャッチ

「濃いコーヒー=エスプレッソ」だと思っていませんか。「ドリップコーヒーと何が違うの?」「そもそも家でも淹れられるの?」——カフェのメニューでよく見かけるわりに、エスプレッソが何なのかは意外とあいまいなままです。

この記事では、エスプレッソとは何かを、ドリップとの違い(比較表)・なぜ濃くなるのかという抽出の原理・クレマの正体・自宅で淹れる3つの方法まで、順番に整理します。読み終えるころには、「濃いコーヒー」と「エスプレッソ」がどう違うのかがはっきり分かります。

結論を先に言うと——エスプレッソとは、高い圧力(約9気圧)で短時間に抽出した濃厚なコーヒーのことです。ドリップとの本質的な違いは、豆の種類でも焙煎でもなく「圧力をかけて淹れるかどうか」にあります。

目次

エスプレッソとは「濃いコーヒー」ではなく淹れ方の名前だった

エスプレッソとは、豆の種類や焙煎度を指す言葉ではなく、圧力をかけて淹れる「抽出方法」の名前です。「エスプレッソ用の特別な豆」があるわけではなく、同じ豆でも淹れ方を変えれば、ドリップにもエスプレッソにもなります。ここを押さえると、以降の話がすっきり理解できます。

エスプレッソは「高圧・短時間」で抽出した濃厚な一杯

エスプレッソの正体は、約9気圧の圧力で、20〜30秒ほどの短時間に一気に抽出した濃厚なコーヒーです。ドリップが「湯を注いで重力で落とす」のに対し、エスプレッソは機械の力で湯を粉に押し通します。

この高圧・短時間の抽出のために、豆は極細挽きにし、一杯の量は25〜40ml前後とごく少量に仕上げます。伝統的なイタリアの規格では、粉7g・湯温88℃・抽出圧9bar・抽出時間25秒・抽出量25mlが一つの目安とされています。同じ豆でも、この淹れ方をすればドリップとはまったく別物の濃さになります。

ドリップとの違いは「圧力をかけるかどうか」

エスプレッソとドリップの違いを、抽出の力・時間・挽き目・量・濃度で並べると、下の表のようになります。

項目 エスプレッソ ドリップ
抽出の力 圧力(約9気圧) 重力
抽出時間 約25〜30秒 約3〜4分
挽き目 極細挽き 中細〜中挽き
一杯の量 約25〜40ml 約150〜240ml
濃度(TDS) 概ね1桁高い(濃厚) 標準的
クレマ あり(赤褐色の泡) なし

いちばんの違いは、いちばん上の「抽出の力」です。エスプレッソは圧力、ドリップは重力で淹れます。この差が、抽出時間の短さ・量の少なさ・濃さ・クレマ(後述する泡)の有無すべてに効いてきます。濃度についても、エスプレッソはドリップより概ね1桁高い濃さになります。ドリップ側の濃度の目安は、スペシャルティコーヒー協会(SCA)のゴールデンカップ基準でTDS1.15〜1.35%とされており、エスプレッソはこれより大幅に濃い領域です。

ちなみに「濃度が◯倍」といった倍率は、条件で大きく変わるためここでは断定しません。表のとおり「1桁高い」とイメージしておけば十分です。重力でゆっくり淹れるドリップコーヒーの基本と種類を知っておくと、エスプレッソとの対比がより分かりやすくなります。

なぜエスプレッソは濃くなる?約9気圧とクレマの科学

エスプレッソのクレマ(赤褐色の泡)の接写
Photo by Rob Wicks on Unsplash (Rob Wicks)

エスプレッソが濃厚になり、表面に赤褐色の泡ができる理由は、抽出にかかる「圧力」で説明できます。ここでは、研究で報告されている抽出の原理を整理します。この原理が分かると、自宅で器具を選ぶときの判断基準にもなります。

カギは約9気圧という高圧抽出

エスプレッソの濃さの正体は、約9気圧という高い圧力にあります。高圧で湯を細かい粉の層に一気に押し通すことで、短時間でもコクや脂質の成分まで引き出せるのです。

抽出の再現性を扱った研究では、少量・やや粗めの挽き目・短時間のほうが、安定して同等の濃度を得やすいと報告されています。抽出の効率は挽き目に対してピークを持ち、細かくしすぎると湯が均一に通らず(チャネリング)、かえって抽出が下がるとされています。つまり「極細ならとにかく濃く出る」わけではなく、圧力・挽き目・時間のバランスで決まる、という点が科学的なポイントです。だからこそ、家庭で本格的なエスプレッソを淹れるには「圧力をかけられる器具」が欠かせません。

クレマの正体は油と気泡でできた赤褐色の泡

エスプレッソの表面を覆う赤褐色の泡は「クレマ」と呼ばれ、ドリップにはないエスプレッソの目印です。研究では、クレマは水中に微細な油滴が分散した「エマルション」状の泡だと報告されています。

泡ができる仕組みは、こう説明されています。まず、高い圧力で豆の脂質が乳化します。焙煎の過程で豆に取り込まれた二酸化炭素(CO2)が、抽出後に圧力から解放される瞬間に細かな泡となります。さらに界面活性の働きを持つ成分がその泡を安定させる——この組み合わせで、あの赤褐色のクレマが生まれます。クレマは標準的なエスプレッソの少なくとも1割ほどを占めるとされ、クレマがあるかどうかは、エスプレッソとドリップを見分ける分かりやすい手がかりになります。

伝統規格と現代スペシャルティ、2つの正解がある

エスプレッソの淹れ方には、実は「唯一の正解」はありません。イタリアの伝統規格と、現代のスペシャルティコーヒーの考え方では、狙う濃さや味が違うからです。私たちは、この2つを別の物差しとして分けて考えています。

基準 イタリア伝統規格 現代スペシャルティ
粉量 約7g(シングル) 約18〜20g(ダブル)
抽出量 約25ml 約36〜40ml
比率の目安 粉:液=約1:2
湯温 約88℃ 概ね90〜96℃帯で調整
抽出圧 約9bar 9bar前後
抽出時間 約25秒 約25〜30秒
味の狙い 伝統的な濃厚・ビター 豆の個性・甘み・クリーンさ

左のイタリア伝統規格は、少量で濃く、どっしりとした苦味を狙う古典的なスタイルです。右の現代スペシャルティは、粉を多めに使うのが特徴です。粉と液の比率をおよそ1:2に取り、豆本来の甘みや個性を引き出す方向です。なお現代側の数値は「主流の傾向」であって、規格として定められた値ではありません。どちらが優れているという話ではなく、「どんな味を目指すか」で選ぶ物差しが変わる、と理解しておくとよいでしょう。

自宅でエスプレッソを淹れる3つの方法

「家でもエスプレッソを淹れてみたい」という場合、選択肢は大きく分けて「エスプレッソマシン」か「代替器具」かの2つです。ここでは器具の選び方の見取り図を示します。具体的な淹れ方の手順は、後半でくわしい記事にご案内します。

本格派はマシン、手軽に始めるなら3つの代替器具

約9気圧という本格的な圧力を出せるのは、基本的にエスプレッソマシンだけです。ただしマシンは価格や設置場所のハードルがあるため、まず「濃いコーヒーを家で楽しみたい」なら、手軽な代替器具から始めるのがおすすめです。代表的な3つの器具を、圧力・手軽さ・向いている人で整理すると、次のようになります。

器具 圧力 手軽さ 向いている人
エスプレッソマシン 約9気圧(本格) △(価格・設置) クレマまで本格志向の人
モカポット(直火式) 約1.5気圧 電源なしで濃い一杯を手軽に飲みたい人
エアロプレス 手押し(高圧ではない) 後片付けが簡単で1杯ずつ淹れたい人
フレンチプレス 圧力なし(浸漬式) 豆の油分ごとコクを楽しみたい人

ここで正直にお伝えしておきたいのは、代替器具はあくまで「エスプレッソ風」の濃いコーヒーであって、本来のエスプレッソ(約9気圧)そのものではないということです。たとえば直火式のモカポットは、物理の研究によると内部の圧力は約1.5気圧ほどで、9気圧には遠く及びません。エアロプレスも手で押す方式のため、エスプレッソほどの高圧はかかりません。それでも、電源のいらない手軽さや後片付けのしやすさは大きな魅力で、「マシンを買う前に濃いコーヒーを試したい」という最初の一歩には十分に向いています。

自宅でエスプレッソを淹れる具体的な手順は、マシン・モカポットそれぞれのやり方を自宅でエスプレッソを淹れる具体的な手順でくわしく解説しています。器具が決まったら、こちらの手順に沿って淹れてみてください。

エスプレッソに向く豆・焙煎の選び方

エスプレッソ向けの深煎りコーヒー豆
Photo by Tina Guina on Unsplash (Tina Guina)

エスプレッソ用の特別な豆があるわけではありませんが、淹れ方の相性から見ると、深煎り〜中深煎り・極細挽きが基本です。どんな味を目指すかで、選ぶ焙煎度は変わってきます。

基本は深煎り、個性を出すなら中煎りも

エスプレッソには、伝統的には深煎り〜中深煎りの豆がよく合います。焙煎の観点で言うと、高圧・短時間の抽出は焙煎の香ばしさやコクを引き出しやすく、深煎りの濃厚な味と好相性だからです。焙煎度別の飲み方でも、深煎りはエスプレッソやカフェオレに向くとされています。

一方で、現代のスペシャルティコーヒーでは、あえて中煎りの豆でエスプレッソを淹れ、甘みや豆の個性を引き出すという潮流もあります。「どっしりした苦味の伝統派なら深煎り・豆の個性を楽しみたいなら中煎りも」という具合に、狙う味で選び分けるとよいでしょう。焙煎度そのものについては、焙煎度と味わいの関係でくわしく解説しています。

挽き目は「極細」が要点

エスプレッソでは、豆を極細挽きにするのが要点です。短時間で成分を引き出すために、湯と粉が触れる面を大きくする必要があるからです。

ただし、前述のとおり細かくしすぎると湯が均一に通らず、かえって抽出が不安定になります。極細を狙いつつも「細かければ細かいほど良い」わけではない、というバランスが大切です。挽き目の合わせ方は器具によっても変わるため、コーヒー豆の挽き方の基本と挽き目の選び方も参考にしてみてください。

エスプレッソのよくある疑問

エスプレッソ1杯のカフェイン量のイメージ
Photo by Adi Goldstein on Unsplash (Adi Goldstein)

最後に、エスプレッソについてよく検索される疑問を、公的機関のデータをもとに整理します。

エスプレッソのカフェインは多い?

「濃いからカフェインも多いのでは」と思われがちですが、1杯あたりの総量で見ると、エスプレッソは意外と少なめです。エスプレッソは一杯が約30mlとごく少量なので、1ショットのカフェイン総量は、ドリップコーヒー1杯より少ないことも多いのです。

具体的な数値を並べると、比較しやすくなります。USDA(米国農務省)の食品データベースでは、ドリップコーヒー1杯(約240ml)のカフェインは約95mg、エスプレッソ1ショット(約30ml)は約63mgとされています。「量あたりは濃いが、飲む総量が少ないので1杯のカフェインはドリップより少なめ」というのが実際のところです。健康な成人の1日の摂取量の目安は、米国FDAが400mgまでとしています。

なお、妊娠中・授乳中のカフェインの目安は、体調や時期によって基準が異なり、ここでは断定しません。妊娠・授乳とエスプレッソのカフェインについては、妊娠・授乳中のエスプレッソとカフェインの目安で公的な目安を整理していますので、あわせてご確認ください。

エスプレッソとラテ・カプチーノは何が違う?

カフェのメニューでよく並ぶ「ラテ」や「カプチーノ」は、エスプレッソを土台に、ミルクを加えたドリンクです。エスプレッソにたっぷりのスチームミルクを加えればカフェラテ、ミルクとふんわりした泡(フォーム)を重ねればカプチーノ、というように、ベースはどれもエスプレッソです。

つまりエスプレッソは、そのまま飲むだけでなく、さまざまなミルクメニューの「素」にもなる存在です。「濃いコーヒー」と「エスプレッソ」の違いに加えて、この派生の関係を知っておくと、カフェのメニューがぐっと分かりやすくなります。健康面での良し悪しは、飲む量や淹れ方によって変わるため、一概にどちらが良いとは言えません。

マシンやモカポットでの具体的な淹れ方は、下記の記事で手順を解説しています。

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まとめ:エスプレッソは「圧力で淹れる濃厚な一杯」

エスプレッソとは、約9気圧の高い圧力で短時間に抽出した、濃厚なコーヒーのことです。ドリップとの本質的な違いは、豆や焙煎ではなく「圧力をかけて淹れるかどうか」にあり、その圧力が濃さや、赤褐色のクレマを生み出しています。淹れ方には、伝統的なイタリア規格と、豆の個性を狙う現代スペシャルティという2つの物差しがあることも押さえておきましょう。

自宅で試すなら、まずは手軽な代替器具から始めるのがおすすめです。実際に淹れてみたくなったら、器具ごとの具体的な手順を参考にしながら、一杯を淹れてみてください。

器具選びに迷ったら、次を目安にどうぞ。電源のいらない手軽さで濃い一杯を楽しみたいならモカポット、後片付けが簡単で1杯ずつ淹れたいならエアロプレス、豆の油分ごとコクを味わいたいならフレンチプレスが、それぞれ最初の1台に向いています。


文|カプ

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